Masukダンからもらった魔道具の笛を机から取り出し、思い切り吹く。
相変わらず音はしない。
でもきっとダンには聞こえているはず——。
そして家でをした時と同じくらいの間で、彼女が瞬時に目の前に現れたのだった。
「ダン!」「あれから十日ほどしか経っておらぬが……また夫婦喧嘩か?」
若干呆れた表情のダンが、私とドミニク様を交互に見やった。私たちは視線を合わせ、少し気まずい空気が流れる。
でも今はそんなことを気にしている時ではない。
「今回は違うの。陛下の……シルベリオ皇帝陛下の件でダンに聞きたいことがあって」 ——ガタッ!——突然ダンが体勢を崩し、机
執務室でも良かったけれど、ここが一番落ち着いてお話ができる。 ダンからもらった魔道具の笛を机から取り出し、思い切り吹く。 相変わらず音はしない。 でもきっとダンには聞こえているはず——。 そして家でをした時と同じくらいの間で、彼女が瞬時に目の前に現れたのだった。 「ダン!」 「あれから十日ほどしか経っておらぬが……また夫婦喧嘩か?」 若干呆れた表情のダンが、私とドミニク様を交互に見やった。 私たちは視線を合わせ、少し気まずい空気が流れる。 でも今はそんなことを気にしている時ではない。 「今回は違うの。陛下の……シルベリオ皇帝陛下の件でダンに聞きたいことがあって」 ——ガタッ!—— 突然ダンが体勢を崩し、机にもたれかかっている。 明らかに動揺しているわ……どうしたのかしら。 「皇帝陛下が物凄くダンに会いたがっているの」 ——ガタガタンッ!—— さらに体制を崩すダン……床に突っ伏してしまうのではないかというくらいに。 皇帝陛下のお話はご法度なの……? 「ダン……大丈夫?」 「だ、大丈夫だ…………少し驚いただけだ」 全然少しには見えないんだけど。 起き上がるのを手伝いながら、彼女の様子を窺う。 なんとなくだけど顔が赤い感じがするような……? 二人が知り合いなのは知っているけれど、どういう関係なのだろう。
「ん……っ」 朝陽の眩しさに目が覚め、まだ瞼は重いもののゆっくりと開いた。 目の前には愛する人が寝息を立てて眠っている。 ドミニク様……毎日お顔を見ているはずなのに、毎日ときめいてしまう。 私は昨日白ワインを一気飲みして倒れ、ドミニク様に運ばれてこのベッドで……はしたないことをしてしまったのを思い出し、恥ずかしくて枕に顔を埋めた。 皆が集まった王宮であんな風に乱れるなんて……! 「私の姫は朝から百面相かな」 「ドミニク様!起きていたならお声をかけてください!」 「ふふっ。可愛くてつい眺めてしまったよ。おはよう」 力強い腕に引き寄せられ、一気にドミニク様の温もりに包まれた。 体中に幸せな気持ちが染みわたっていく——。 「おはようございます……」 「体調はどう?」 「もう大丈夫です。ぐっすり眠れましたので」 「昨夜無理させてしまったかなと思ったけど、よかった」 またしても昨夜を思い出し、顔に熱が集まってくる。 絶対に赤くなっているに違いない。 恥ずかしくて顔を上げられずにいる私の耳元で、ドミニク様が昨夜の酒宴での話をし始めたのだった。 「昨夜皇帝陛下から、私が王族に戻ったらイースナビア帝国に短期留学しに来てはどうかと話があったんだ」 「留学?それは、どのくらい……」 「それほど長くはないと思う」 ドミニク様が帝国へ……イースナビア帝国へ行くこと自体は問題ないと思う。 私の中で引っかかっているのは、セリス嬢のことだ。 あのお方は明らかにドミニク様のことを想っている。
シルベリオ皇帝陛下の言葉に、部屋にいた皆が固まってしまう。 「え……いや、それは……」 私が歯切れの悪い返事をすると、陛下は「何が問題なのだ」と不思議そうな顔をする。 この皇帝陛下はどこまで自由なんだ……案の定すっかり目を覚ましたバズズ殿とセリス嬢は頭を抱えている。 私は西の人間だ。 しかも王族……西の国の王族が婚姻とは関係なく東のイースナビア帝国へ行くのは、西のウェインドル帝国がいい顔をするはずがない。 私が行くということはティナも行くということ。 白の魔女まで東に行ってしまうと知れば、ウェンインドル帝国は我が国に必ず圧力をかけてくるに違いない。 皇帝陛下もそれは理解しているはずなのに——。 「ふふっ、そう固く考えるな。王族に戻るということで、留学という形にして短期間滞在すればいい」 「留学……」 「西と東の友好関係を深める目的だとでも伝えれば、ウェインドル帝国も口を出せまい」 何も考えずに話しているように見えたのに……驚く私の横から、カルロ王子が言葉を発した。 「それなら私も自国に戻るので、クリスティーナに東の国に来てほしいですし、ちょうどいいです。そろそろ父上や兄上が国を挙げて動きそうですから」 「それについては私の方でも面白い情報が入っているぞ、カルロ王子。そなたの父や祖父が白の魔女の家族に対して、色々とやらかしていたようだな」 シルベリオ皇帝陛下はカルロ王子に詰め寄っていく。 物凄い圧だ……武道の心得などなくとも、自分が猛獣に睨まれた小動物になったかのような気持ちにさせられる。 それにしてもどこでその情報を? まさかアロッサ村でのことを見られていたのか……?! バズズ殿の方をチラリと窺うと、一瞬だけ目を伏せたのですべてを察する。 まさかあの時から見張られていたとは……! カルロ王子も青天の霹靂だったようで、驚きのあまり言葉が出てこない様子だった。 「私の推察でしかないが……カラドゥス王国はリドメキシアの秘薬についても関わっているのか?」 「…………はい。父上は子爵家がエデンからリドメキシアを持ち出し、秘薬を精製したのを嗅ぎ付けました。そして皇帝陛下に黙っているのを条件に、子爵家にリドメキシアの増産と精製を指示したのです……金は王家からいくらでも出すと」 「やはりな。我が国がいくら同盟の話を持ちだしても全く
「ティナ……ゆっくりお休み」 さっきまで私に欲望をぶつけられ、散々体に快楽を刻まれたティナは、ゆっくりと瞼を閉じていく。 お酒が回ってもう起きていられないのだろう。 徐々に寝落ちていく可愛い姿を見守りながら、彼女の額にキスを落とした。 「ド……ム…………」 眠りに落ちる刹那、私の名を呼び意識を手放した。 愛する婚約者であり、偉大なる白の魔女……彼女を守る為に、自分も戦わなくては。 彼女の中から自分の怒張を引き抜き、秘所からあふれ出る精を綺麗に拭き取り、ティナが健やかに眠れるように体を綺麗に整えていく。 そして自分の服装も整え、まだ皆がいる酒宴の場へと戻って行った。 「遅くなって申し訳ございません。ティナが眠りました」 「ドミニク!遅かったな、そうとう体調が悪いのかと皆で話していたのだ」 私が戻ると一番に声かけてきたのは兄上だった。 もう少し遅かったら誰かが様子を見に来ていたところだったか……危なかったな。 ふと視線を移すと、バズズ殿がソファの寄りかかりながら項垂れている姿が目に入ってくる。 「皇帝陛下、バズズ殿は……」 「ああ。あいつは白の魔女を酔わせてしまったので飲んだくれているのだ」 「え?!」 「騎士団長を務めてから、自分が守るべき者を守れなかったのは初めてだからな。はっはっはっ」 「はあ……」 バズズ殿のような凄腕の者でも今回の件は予測できなかっただろうから気にするなと言いたいところだが……きっとプライドの問題なのだろうな。 私は少し哀れに思い、バズズ殿に声をかけた。 「バズズ殿」 「う…………ティナ、さま……」 「………………」 恐らくバズズ殿はお酒に弱いのだろうな。 帝国の騎士団長が不慣れなお酒を煽るほど……しかしいつもは「白の魔女様」と呼んでいるのに「ティナ」の名を——。 ざわざわと嫌な予感が体を駆け巡る。 まさかバズズ殿はティナを……そんなことを考えていると、セリス嬢に声をかけられて我に返った。 「閣下」 「ああ、セリス嬢か。バズズ殿はすっかり潰れてしまっているのだが」 「まったく、団長もだらしない。放っておいて大丈夫です、その内復活しますので」 「そ、そうか……分かった」 回復力も並みの人間ではないということか。 「白の魔女様は大丈夫でしたか?」 「ああ、かなりお酒が
「んんっ、ん――……っ」 ここは王宮で、まだ皇帝陛下や国王夫妻、シェリアン様など皆が集まってお話されているというのに……私たちはベッドで乱れ、互いの唾液を絡ませる水音をくちゅくちゅと響かせていた。 「は……ぁ…………んぅ……」 「ティナ……君は私だけのものなのに」 ドミニク様の瞳が不安に揺れているように見えて、まるで独占欲を分からせるように、自身の昂りを私の股座に押し付けてくる。 「んんっ……や、ぁ……」 「イヤだって言いながら、自分から腰を押し付けているよ……やっぱり分からせないと」 まだドレスを着たままだったスカート部分をたくし上げ、下着を脱ぎ去り、私の恥部を露わにした。 そしてそこにふーっと息を吹きかけてくる。 「ひっ、やぁぁ……っ!」 「ひくひくしてる。可愛い。ここも私のものだ」 舌なめずりする音が聞こえてくるようだった。 そして次の瞬間、彼の舌が私の秘所を這っていく。 「ひゃあぁぁ」 全身が粟立つ快感。 指をねじ込まれ、気持ちいい箇所を的確に刺激し、腰が自然と浮いてしまう。 ダメ、気持ちいい……もっとソコをグリグリしてほしい……そんな私の気持ちが聞こえたかのように、ドミニク様の指がうごめく。 「あっ、あっ、らめ、イクッ、イッちゃ……うぅ……~~っ!!」 あっという間に達し、目の前がバチバチと弾けた。
「いや~~~ここの酒は美味いな!そう思わないか、セリス?」 「はぁ……陛下、飲み過ぎては会話も何もありません。閣下とお話したかったのでしょう?」 「相変わらずお前は小言が多いな。そんな事で好いた者の心を射止められるのか?」 「わ、私の事は放っておいてください!」 皇帝陛下は自身の部下であるセリス嬢に対して悪態をついている……これは止めるべきなのかしら。 皇帝と騎士団の隊長なのにとても距離が近くて親しげな事に驚いてしまう。 そこへドミニク様が近づき、陛下とセリス嬢の間に入った。 「陛下、私にお話しがあると仰っておりましたが、どのようなお話でしょうか?」 ドミニク様はセリス嬢に目配せをする……今のうちにその場を離れるように、さり気なく助け船を出したのね。 さすがドミニク様だわ。 やり方もスマートだし、優しくて見惚れてしまう。 セリス嬢はその場から去り……彼女の視線が…………ドミニク様を見る目が熱を帯びている。 やっぱり気のせいではなく、セリス嬢はドミニク様の事を……だからと言ってドミニク様が他の女性のところに行くとは思っていないけど。 でも胸がじくじくしてしまう。 こんなに素敵なのですもの、やっぱりモテるわよね。 私はモヤモヤする気持ちを抑えようと、果実水をちまちま飲んでいく。 「クリスティーナったら、そんなに果実水が美味しいの?」 一緒にソファに座っていたシェリアン様が不思議そうに聞いてくる。 向かいに座る王妃殿下も同じような表情をされているのを見て、自分の行動のおかしさに気付いたのだった。 「えっと、凄く美味しくて!」 「ふーん。まぁ、王宮の果実水だもの、美味しいに決ま
中に入れた彼の指がグイッと曲げられ、一か所をトントンし始める。 指の動きに合わせて、体中に電流が走ったかのような感覚に襲われ、嬌声が大きくなっていった。 「あ?や、ソコ…………だめっ…………あぅ……ひっ、あぁっ……!」 「ここが気持ちいいんだね、もっと気持ちよくなっていいんだよ」 「あぅ……あ、あっ……何か、キちゃう……~~~っ!」 今まで感じた事のない快感が襲ってきて、必死にドミニク様の頭にしがみついた。 そして体が激しく痙攣したと同時に、目の前でチカチカと火花が散っていく。 「ふっ……んんっ…………」 今のは何? さっ
涙を拭ってくれた手は私の頬に添えられ、やがてほんの少し触れるだけの口づけをかわした。 初めてのキスが愛する人で本当に幸せ。 「ふふっ、顔が真っ赤だ」 「仕方ないのです!初めてなのですから……」 「ふーん。ヤヌシュ君ともしたことはないの?」 ヤヌシュとは本当に友達の関係だったし、向こうに子供だと言われていたので、そういう雰囲気にすらならなかった。 この年になってキスが初めてなんて、引かれてしまうかしら。 「ヤヌシュともした事はありませんわ。この年で初めてなんて、恥ずかしい」 「恥ずかしがることはないよ、誰にでも初めてはある。ティナにとってその相手が私で、本当に光栄だ
「ティナとヤヌシュ君の婚約は、陛下の了承の元、解消する事が無事に決定したよ」 婚約破棄騒動があってから2日後、お父様が朝の食事の席で私に報告をしてくれた。 「そうですか」 お父様からの報告にとてもホッとしている自分がいる。 あんな事があってこれ以上婚約者でいる事は不可能だし、何よりお互いに想い人がいる状態なのだから、この婚約は解消した方が良かったのよね。 ヤヌシュの方にはナタリア嬢のお腹に彼の子供が宿っている。 不誠実な事をしていたとは言え子供に罪はないから、彼らの幸せを祈る事にしよう。 「まさかもうお相手のお腹に子供がいるとは驚きだけどね……」 私はこの婚
バタバタと王宮内を走り抜ける。 たしか裏庭にガゼボがあるから、早くそこへ行きたい……ほとんど人通りのない廊下を通り抜けて裏庭のガゼボにたどり着く。 そして中にあるベンチに座り、項垂れた。 「はぁ……はぁ…………っ」 荒い息を整えて、今の状況を頭の中で整理してみる。 一緒にいたナタリアという女性と結婚したいから、私との婚約を破棄したいと言うヤヌシュの顔は、今まで見た事もないくらい真剣で蕩けるような表情だった。 私には決して向けられることのなかった顔――。 本当に真実の愛を見つけたのね。 それは幼馴染として祝福してあげなければならなかったのかもしれない。 ただ、何もあの







